オランダの街を歩いていると、美しい鐘のメロディーが何処となく聞こえてきます!
それは「カリヨン」という、数多くの鐘で構成された巨大な楽器。
Carillon
実際オランダにいても、何気なく聞き流してしまうことが多いカリヨンの音色。
そこで今回の記事では、私自身の投稿した動画もたくさん取り入れて、カリヨンの楽しみ方もお伝えしていきます。
※2022年10月11日 更新
オランダはカリヨンの宝庫
カリヨンといえば、ユネスコの世界遺産に登録されている、ベルギーとフランスの鐘楼郡が有名ですね。
しかしながら数量でいうとオランダが圧倒的に多く、世界一のカリヨン保有国でもあり、その数はなんと200ヶ所にも及びます‼️
🔵カリヨン保有国の順位
- オランダ
- アメリカ
- ベルギー
- フランス
オランダは小さな国にもかかわらずこれだけの数があるので、どこの街に行ってもカリヨンの音を聞ける確率が高いのです。
『犬も歩けば棒に当たる』というコトワザではないですが、『オランダを歩けばカリヨンを聞ける』という具合に。(笑)
カリヨンのある場所は教会だけでなく、数百年前から存在する市庁舎や、他の建築物にも設置されています。
このインスタグラムの映像は、レーワルデン (Leeuwarden) の旧市庁舎。
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オランダを代表する画家『ファン・ゴッホ』の生家の前にある市庁舎にも、カリヨンが備わっています。
この曲は『神は我がやぐら』のようです。
とても綺麗な音色ですよ‼️
アムステルダムにはたくさんのカリヨンがある!
オランダの首都・アムステルダムを例に挙げると、旧市街地だけでもカリヨンを設置してある場所はこんなにあります。
- 王宮
- 西教会
- 南教会
- 旧教会
- ムント塔
- 国立美術館
この中で西教会と旧教会、そしてムント塔では、毎週コンサートを開催。
- 西教会:火曜日 12:00 ~ 13:00
- 旧教会:火曜日 16:00 ~ 16:30 / 土曜日 16:00 ~ 17:00
- ムント塔:土曜日 14:00 ~ 15:00
こちらはムント塔で、王宮や国立美術館も同様に教会ではありませんが、カリヨンが設置されています。
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カリヨン自動演奏の仕組み
ゼンマイ仕掛けの小さなオルゴールをイメージすると分かりやすいと思いますが、巨大なドラム/バレルに取り付けられたピンがレバーを弾き、ケーブルを伝ってハンマーが鐘を叩き音が出ます。
ただ、実物はとんでもなくデカいです!
機械式で動く一組のカリヨンには、ピンで弾くレバーと鐘の間に無数のケーブルで繋がれています。
🇧🇪ゲントの鐘楼にある、カリヨンの自動演奏。
— アルト・オランダ (@Artoshack) February 12, 2020
巨大なオルゴールですね‼️
ドラムには4曲分のピンが埋め込まれてあります。
15分置きに1曲ずつ演奏。
つまり、15分置きに1/4回転🧐 pic.twitter.com/1znY889UWO
上のツイートの映像は自動演奏の一例で、ベルギー・ゲントの鐘楼にあるもの。
現在のカリヨンは電動で自動的に稼働していますが、中世の頃に電気は無いので巨大なゼンマイ仕かけで動いていました。
カリヨンの鐘には外側と内側にもハンマーが備えてあり、外側のハンマーが自動演奏用。
よく見ると、ひとつの鐘に2〜3つのハンマーがあることに気がつくと思います‼️
曲によっては同じ音を8部音符や16部音符などのように、連続して演奏することもあります。
しかしながら、ひとつのハンマーは極めて短い時間に作動することができません。
そこで、同じ音の出るピンを取り付ける穴が回転バレルに2〜3つあり、時間をずらして別々のハンマーを動かしているのです。
そして、鐘の内側にある丸い球は、カリヨン専用の鍵盤からケーブルで繋がっていて、音が出るようになっています。
カリヨンの鳴る時間帯
ほとんどのカリヨンは、15分おきに自動演奏のメロディが流れてきます。
- 毎時00分:長めの曲
- 毎時30分:少し短め
- 毎時15分と45分:短めのメロディ
時報を知らせるときに大きな鐘が「ゴーン、ゴーン…」と鳴るので、実際にはその1分くらい前からカリヨンのメロディが流れてきます。
ちなみに、時報を知らせる鐘はカリヨンとは別物。
自動演奏では15〜30分ごとに、違う曲が組み込まれていてます。
そして、年に1〜2回ほど曲を変えてます。
こちらは、オランダ南部のミドルブルグ (Middelburg) の街にある教会塔で、時報の前にゴットファーザーの曲が流れてきました!
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🔵ところで夜は⁉️
さすがに、人々が寝静まる夜中には鳴りません。
当然ながら騒音問題になってしまいますから。
場所によっても時間は異なりますが、夜中から朝にかけて自動演奏は止まります。
カラクリ人形も登場
ここで、ちょっとユニークなカリヨンを2つ紹介します。
- Gouda:ゴーダ (ハウダ)、旧市庁舎
- Amersfoort:アメルスフォールト、聖ジョージ教会
ゴーダ旧市庁舎
こちらは、ゴーダの旧市庁舎に取り付けられたカリヨン。
たった5つの鐘しかありませんが、とても心地よいメロディを演奏します。
カリヨンが鳴り始めると、扉の中から人形が登場。
- メロディが鳴り出す時間:毎時02分と32分
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旧市庁舎の反対側に位置する聖ヤン教会にもカリヨンがあるので、ゴーダの街を訪れた時には忘れずにチェックを!
アメルスフォールト
アメルスフォールト旧市街地の中心部に位置した聖ジョージ教会には、小屋のような建物に小さなカリヨンがあり、メロディが流れてくると人形も登場します。
この教会では、時報を知らせる鐘が鳴った後に、メロディが鳴りはじめます。
1時間に一度だけですが、これを楽しみに見に来る人もいます。
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カリヨン・コンサートも頻繁に開催!
カリヨンには自動演奏の他に、ステックでできたピアノのような鍵盤もあるので、いろんな曲を弾くことができます。
もちろん演奏するのは、カリヨン奏者。
定期的にコンサートも行われていて、特に春から秋にかけてが盛んです。
その他に、特別な日に演奏が行われ場合もあります。
- コンサートの開催:週に1~2回
- 演奏時間:30〜60分
コンサートとはいっても屋外で聴けるので、もちろん無料です。
演奏される曲はクラシック音楽からポップまで様々。
近場のテラス席などに座って、美しい音色を楽しむのもオススメです。
注意点としては、建物の真下にはいないこと。
教会のカリヨンは、塔の高いところに設置してあるので、少し離れないと音が伝わってきません。
この映像は、アルクマールの教会 (Grote Kerk) が、2018年に教会誕生500周年を記念して、地上40メートルのところに足場を組んで見学できるというイベントがありました。
鍵盤はよく見えませんが、演奏している様子と鐘を鳴らす動きがよく分かると思います!
一部の教会では、年末になるとクリスマスのメロディも演奏します。
コンサートが聴けるオススメの場所
私がおすすめするカリヨンコンサートが聞ける場所を、いくつかお伝えします。
- Delft Nieuwe kerk (デルフト新教会)、土曜日 11:00 ~ 12:00
- Utrecht Dom (ユトレヒト・ドム塔)、土曜日 11:00 ~ 12:00
- Alkmaar Waag (ワーグ)
- 金曜日(チーズマーケット開催期間中) 9:15~, 11:00~, 12:00~
- 土曜日 11:00 ~ 12:00
- Haarlem St. Bavo kerk (ハーレム・聖バフォ教会)
- 月曜日 12:00 ~ 13:00 / 金曜日 12:30 ~ 13:00
- Amsterdam Oude kerk (アムステルダム旧教会)
- 火曜日 16:00 ~ 16:30 / 土曜日 16:00 ~ 17:00
- Amsterdam Munttoren (アムステルダム・ムント塔)
- 土曜日 14:00 ~ 15:00
デルフト・新教会
デルフト新教会の前は大きな広場になっていて、テラス席もたくさんあるので、カフェを楽しみながら聴けます。
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ユトレヒト・ドム塔
ユトレヒトでは、ドム教会の中庭がカリヨンの演奏を聞くベストスポット。(無料で立ち入れます)
もちろん、塔の周辺にはカフェもあるのでテラス席に着くのもいいですよ。
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アルクマール・ワーグ
アルクマールでは、チーズマーケットが開催される時期の金曜日になると、9時頃と11時、12時にカリヨンを演奏します。
この建物 (ワーグ) の周りにもたくさんのカフェ・レストランがあるので、テラス席でくつろぎながら演奏を聴くことができます。
同じ日にカリヨン奏者は近くの教会 (Grote Kerk) に移動して、再び演奏を行います。
- Grote kerk (聖ラウレンス教会)、13:30 ~ 14:30
お伝えした以外の教会でも、大抵の場合は土曜日のお昼前後にコンサートが行われるので、もし週末に街に出かけることがありましたら、チョット耳を澄ましてみるといいですよ。
ここでひとつ、隣のベルギーも紹介しておきます。
こちらは、メヘレン市内にある聖ロンバウツ大聖堂のカリヨン🔔
インスタグラムの2枚目に、カリヨンの鐘を見ながらメロディが聴けます。
なんとこの教会には、2組の巨大なカリヨンがあるのです‼️
オランダでも、アメルスフォールトの聖母塔に2組設置されています。
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🔵ここでチョットひと言
美しいメロディを演奏してくれるカリヨン奏者は、毎回高い塔を上がって鍵盤のある所まで行くのです。
ほとんどの教会塔にはエレベータがないので、高いところでは200〜300段以上もの階段を上り下りする、大変な職業でもありますね‼️
世界において演奏が可能な最古のカリヨン
Speeltoren Monnickendam
アムステルダムの少し北に位置したモニケンダムという街には、今現在でも演奏が可能な世界最古のカリヨンが存在しています。
カリヨンが設置されたのは1596年。
こちらの鐘楼はミュージアムにもなっていて、街周辺の地域とカリヨンの歴史についても知ることができます。
時期は不特定ですが、土曜日の11時~11時半にカリヨン奏者による演奏が行われます。
時報を知らせる時には、カラクリ人形のような仕掛けが稼働するのも注目のひとつ。
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ただし高いところにあるので、実際にはよく見えないかと思います。
そこで、こちらの動画の後半にその様子をアップで映し出していますので、ぜひ参考までに!
(カリヨンの演奏は動画の3分24秒から)
カリヨンの歴史について簡単に
カリヨンの歴史は、中世の頃までさかのぼります。
現在のような時計が存在していない当時は、鐘を鳴らすことで人々は時を知ることができました。
鐘を鳴らすのに適する場所といえば、街中に聞こえやすい高いところが最適で、教会の塔などが挙げられます。
しかし、働いていたり会話をしていると、時を知らせる鐘の音を聞き逃してしまう事もあり得ます。
そこで、事前に4つの鐘でメロディを鳴らして、注意を促すというアイデアが14世紀に生まれました。
これがカリヨン起源。
それから鐘の数を増やして、いろんなメロディを演奏するようになったのです。
大都市の間では他に負けない立派なカリヨンを築こうと、競争するかように数多くの鐘や大きなものを設置したりしました。
ちなみに、オランダで最も巨大な鐘は、ドルドレヒトの聖母教会 (Grote Kerk) にあります。
- その重さ:9830kg
カリヨンという名前は、古いフランス語で「4つの鐘」という意味からきています。
Quadrillion = Carillon
オランダではカリヨン以外に Beiaard (バイアールツ)、または Klokken (クロッケン) とも呼びます。
おわりに
オランダに住んでいたり旅行で訪れたりしても、知らないとカリヨンの音色を注意深く聴くことは無いかも知れません。
もしも、街歩きする際にちょっとだけ耳を澄ましてみると、どこからかともなくカリヨンのメロディが聞こえてきますよ!
参考までに私が制作したYouTubeには、生のカリヨンの演奏をたくさん取り入れてますので、よろしければ見て聴いてみてください。
◾️YouTube:Arto Holland Channel
最後にユトレヒト郊外にあるデ・ハール城のカリヨンをお届けして、この記事は終わりとなります。
ご購読、ありがとうございました。